かぐらむら

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今月の特集よき時間、よき思い出が擦り込まれている場所とモノ

古きを活かす

まちの記憶としてここに残るのが最も自然である。

アユミギャラリー

photo「神楽坂らしさ」ということをみんなよく言われてますよね。それはどこにあるかというと、やはり無数にあるいろんな坂道と迷路のような細い路地なんです。神楽坂のまちは第二次世界大戦で壊滅的に破壊されていますから、いまある建物や風情も昭和20年以降のものなんです。だからまあ古い建物でも50年をようやく超えたところですね。このアユミギャラリーも昭和22年の建物なんですよ。ただね、坂道と地割は江戸からずっと継承されてきた。坂と路地を活かしたまちづくり、家づくりを地道にコツコツと戦後やってきた。だから、どこか江戸・明治・大正の匂いもするんですよね。

昭和20年から昭和30年といえば、経済的にもたいへんだったし、建築の材料も乏しかった時代です。しかし、建築の構造から細部まで職人さんたちが丁寧に作った痕跡が見られます。まちや建築に対する考え方が建主ともども真摯でしたね。高度成長期以降は経済合理主義が優先して、まちも建物もどこか心地よさというものから徐々に離れていく。それは歴然としていますね。いま神楽坂も新しい時代に入って行くわけですが、こうした古い建物や路地・坂道を確実にディフェンスしていくことが、このまちの魅力の根源を担っていくことにつながると思います。(鈴木喜一)

photoこの建物は、そもそも昭和22年の東京の町に建てられたものである。町に建てられた特徴として、道に面して実に親しく接しているのである。ポイントは出窓の膨らみ、その外部のマテリアルとして柔らかな煉瓦が丹念に積まれ、腰上の建具は細かくバイアスにデザインされて白いペンキが塗られている。その出窓と歩道のわずかな土地に、ユズリハ、ヒイラギ、アオキなどの木々が植えられていて、道行く人たちにやさしい。町に対する建築の在り方がさりげなく節度をもって表現されていて、町に語りかけているといった風情がある。それが内部の豊かさにもつながっている。つまり、この建物は町といったいであるということが言えそうなのである。とすれば、この建物の保存は個人レベルの問題ではなく、むろん経済効率の問題でもなく、町の記憶としてここに残るのが最も自然であったといえるのだろう。(アユミギャラリーのホームページから)