かぐらむら

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今月の特集自由自在な視点から見た“私の神楽坂”

脇道から眺めた神楽坂

なにを議論し、なにを争ったのだろうか?

―神楽坂三大紛争地巡り―

photoせっかく神楽坂に来るのであれば、路地の風情を楽しみ、美味しいお店に入りたい。誰が好んでもめ事の話を聞きたがろう?しかし、神楽坂も生身の人間が住み、人間らしい出来事が起こる。それに加え、都心再開発の波に洗われ、開発者側と住民との間に鋭い対立を惹き起こしたところも少なくない。その中でも主なものを、私は勝手に「神楽坂三大紛争地」と呼んでいる。

その第一は飯田濠の埋め立てだが、もはや反対運動があったことも飯田濠の存在を窺わせるものも、案内板や緑地帯を除きほとんどない。水辺の景観保全と氾濫しやすい神田川の遊水池としての役割が、反対の論拠だった。事実、埋め立て直後の洪水で神田川では鉄砲水が発生した。また、兄弟分の牛込濠では、水辺を活かしたカフェが繁盛している。
次は、三丁目のマンション開発である。高さや「街並み」の連続性という論点以上に、運動の盛り上がりも注目された。ごく一部の人によるものと聞くが、敷地を囲う塀に飾られた墓型の看板や様々な文言は、(お上品な表現ではなかったが)人を振り向かせる力を感じさせた。

photo最後は五丁目に聳える超高層マンションだ。住民運動も、裁判闘争も、大学研究室による対案もものともせず26階は建った。最も新しい出来事でありながら、この経緯は十分に知られているのだろうか?経緯のごく一端を語る小さな公園が残されている。
出来上がってしまったものに対し、昔の話を蒸し返し、事を荒立てる気がある人はそう多くはないだろう。しかし、これらの地で議論されてきた事に耳を傾け、思いを馳せてみることはけして無駄ではない。(高橋正樹)