かぐらむら

Top > 脇道から眺めた神楽坂 > (02)
今月の特集自由自在な視点から見た“私の神楽坂”

脇道から眺めた神楽坂

神楽坂と科学と文学と

―東京理科大学近代科学資料館―

photo東京理科大学は、日本に近代科学が導入された明治初頭、青年理学士らが近代科学を根付かせるため、東京物理学講習所(後に東京物理学校と改称)として創設されたのが前身である。当初、貴重な実験器具を国内で所有しているのが東京大学だけであったため、授業でこれを借用し、本郷から飯田橋までの道のりを、天秤棒で担いで運んだという。実験が済むと、次の日の朝までにまた同じ道を辿り、必ず返しに行ったそうだ。この科学への情熱と実直さが育んだ理科大の歴史そのものが、近代数学物理の歴史と重なっていると言って過言ではない。

そんな学園史をはじめ、貴重な和本や実験器具、数をかぞえるさまざまな道具(古くはローマ溝そろばん、インディアンが角にピンを刺して使った計算用具、藁や石、算木、そして計算機からコンピュータへと発展していくまでの逸品)が揃う資料館がある。近代科学資料館だ。館内には、エジソンが発明した蓄音機や炭素電球などの展示もあり、現在も精巧に動く姿を実際に見ることができる。古いものは館内に限らず、建物も明治39年に新築された木造2階建ての校舎を復元したもので、レトロモダンな明治建築様式となっている。天気のいい日には白亜の洋館の如く輝き、それ自体が貴重な展示品のようだ。

photoまた、この建物は明治文学とのゆかりも深く、例えば、夏目漱石は「坊っちゃん」の主人公を物理学校出身とし、北原白秋は「物理学校裏」という作品を残している。それぞれの文豪が、この洋館を見て作品のイメージをふくらませていたかもしれない。
神楽坂と科学と文学……近代科学資料館は、好きな分野と時代にタイムトリップできる、心地よい空間だ。
(土森友子)

東京理科大学近代科学資料館
新宿区神楽坂1-3
103・5228・8116
開館時間:10時〜16時
8月8日(日)〜22(日)・月・日・祝休
入館無料