“神楽坂好み”の時間
懐かしい情景
◆ゆ
昔から人の暮らしぶりが見える光景が好きだ。決まって好きなのはクリーニング専門店の店先。額に汗してランニング姿でアイロンをかける。吐息のように外にもれる蒸気。まるで建物が生きているかのよう。生活する営み、人がここに居るという風景は、私を落ち着かさせてくれる。
神楽坂にも温もりのあるクリーニング店がまだ何軒か残っている。そこは木の桟があり、緑とゼラニウムの花が美しく映えるところ。あの硝子戸をカラカラと開けらどんなに気持ちいいことだろう…そんな想像する。懐かしい人にやっと出会えた、やっと見つけた、そんな気分になっていくのは何故だろうか。
元気のない時は回り道をして、その前を通ろう。移り変わりの速くなったまちに、人のくらしが「ここにある」と確かめたいから。