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今月の特集手づくりの心意気を神楽坂で感じてみる

神楽坂 手仕事の現場から

世界に誇るロゴデザイン、家紋

紋章上絵(森川瞭治)

photo着物についている家紋、あの二、三センチ程の小さな円の中に、精緻極まる図柄を描き込むのが、紋章上絵師(もんしょううわえし)の仕事である。伝統的な家紋と創作された紋の数は、四千五百から五千あるといわれる。
それを細い筆と分廻しという竹製のコンパスだけで描き入れる仕事は、職人芸だからこそ可能で、無形文化財としても認められた技である。

神楽坂六丁目の路地に仕事場をもつ森川瞭治さんは、家紋を描き続けて五十年になる。戦前に都立造船工業学校で製図を学び、実家は代々紋章上絵師だったこともあり、自然とこの道に入った。修業についてお聞きすると、「最初はみんな平家の紋である揚羽蝶で練習するんですよ」。どのぐらい描ければ一人前ですかの問いには、「六つも描ければ」。六つとは、着物の胸部分に二つ、袖に二つ、背中心に二つ(合わせるので)、つまり一枚の着物に必要な紋の数である。家紋の大きさは、女紋で二十一ミリ(鯨尺で五分五厘)、男紋で三十八ミリ(同一寸)、舞台や映画では誇張して少し大きくしてあるが、江戸時代には実際大きく女物で一寸ぐらいあったらしい。

photoフランスの著名な美術家が「日本人の最高の美意識」と讚えた紋章の仕事も年々減り、最近ではシルクスクリーンで刷ったり、ワッペンを貼ったりしているところもあるという。森川さんは、実は昨年夏に税務署に廃業届けを出したという。ルイヴィトンは、日本の紋章に影響されてあのデザインを発案し、いまも繁栄を誇るのに、本家の日本には紋章の後継者がいない。さびしい限りである。
【住所】東京都新宿区神楽坂6-26-5