かぐらむら

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今月の特集後編神楽坂の職人が発するクリエイティブの胎動

手仕事の現場から

ものづくりと誠実さ

鮎藤革包堂

photo「仕事場を見れば、その人がわかる」と言っては言い過ぎだろうか。「鮎藤革包堂」の仕事場は、オーナー鮎澤剛さんの人柄が随所に現れている。短冊状の革を敷きつめた総革の床、美しい漆喰の壁、大きく頼もしい作業台、よく手入れをされた機械類、道具類。ここには、気持ちのよい緊張感と、やさしい空気が流れている。
オーダーメイドの革製品を頼む時には、この仕事場で一時間近い対話が求められる。たとえば依頼品が鞄の場合なら、その用途からはじまって、入れるもの、持ち方のクセ、普段の暮らし方、素材の好みまでの調書が製作の第一歩となる。対話をしながらも「言っていることをどこまで具現化できるのか、言わない部分をどこまで汲み取れるのか?」一人の職人として、顧客の希望に応えようと思うと考えることが多い。

昔ながらの職人が働くメーカーで修業を積んだ後、鮎澤さんは独立を決心。ところがその時、先輩の職人から、最低2年間は御礼奉公をしなくてはいけないと教えられ、なるほどと思ったという。結局1年半社内に留まり、続いて外注となって2年間の御礼奉公を果たした。「職人らしい職人が働く最後の世界で学ばせてもらったことが、私の宝ものかもしれない」と彼は考えている。独立目的で退社するにしても、結婚しないとやめさせてくれなかった。職人として、所帯を持つことの大切さを教えられたのである。
ものづくりと誠実さは、不可分の関係にある。手間がかかることは、やはり量産化できないのである。例えば、「手縫いは、ミシン縫いの5倍ぐらい時間がかかる」という。すべての工程を手縫いでやったら、とても採算がとれるものではない。しかしこれはという部分、たとえば強度を求められる個所などは、手縫いでしっかりと縫う方針だ。それでも、最近はオーダーメイドの注文が増えて、完成品を手渡せるのが1年後2年後となってしまうのが、最大の悩みという。

photo鮎藤革包堂
【住所】東京都新宿区筑土八幡町5-12 SKビル1F
【電話】03-3267-0409
【URL】http://www.ayufujikakuhoudo.com/