かぐらむら

Top > 神楽坂、行元寺境内での百姓による仇討事件 > (03)
今月の特集江戸中の町はこの話題で持ち切りに――

神楽坂、行元寺境内での百姓による仇討事件

今に残る大田南畝の隠語碑

仇討ち事件を読み解く

photo牛込に住み当地に縁りの深い文人の大田南畝(蜀山人)は、事件後からかなりの時を置いて、以下の碑文が刻まれたこの仇討の隠語碑を行元寺の境内に建てて顕彰し、南畝自身が碑文の謎解きをしている。
大まかに“現代語訳”すると「天明三年十月八日 不倶戴天(ふぐたいてん=討つべき)仇は誰か? 冨吉と甚内」となる。
刃傷事件をつぶさに表記することが憚られたための、南畝の苦心作であったのだろうか。神楽坂からの移転先、西五反田の行元寺寺内地には現在もこの碑が残っている。
(写真上:行元寺仇討隠語碑(東京都品川区西五反田4丁目)、写真下:隠語碑拓本)

【隠語碑の読み方】

癸卯天明陽月八 二人不戴九人誰
同有下田十一口 湛乎無水納無絲

癸卯天明陽月八=天明三年十月八日
二人不戴九人誰=「二」と「人」を一つの文字にして「天」、「人」(にんべん)に「九」で「仇」
同有下田十一口=「同」の下に「田」で「冨」、「十一」に「口」で「吉」
湛乎無水納無絲=「水」(さんずい)のない「湛」、「絲」(いとへん)のない「納」で「甚内」

photo〈参考文献〉
「行元寺の仇討とその周辺」 鈴木貞夫 歴史研究
「新撰東京名所図絵」牛込區の部 東陽堂
「剣豪列伝集/仇討秘話 行元寺復讐記」 大坪元治 双葉社
「ここは牛込、神楽坂」第18号 牛込倶楽部
「敵討」 吉村昭 新潮文庫
「かたき討ち-復習の作法」 氏家幹人 中公新書
「江戸東京《奇想》徘徊記」 種村季弘 朝日文庫
「敵討」 平出鏗二郎 中公文庫
「定年時代」坂のあるまち 新聞編集センター
「(江戸・東京)坂道物語」 朝倉毅彦 文芸社

文…山口則彦 イラスト…小森傑(すぐる)